読売新聞医療ルネッサンスで以下のような記事が掲載されました
ーー引用ーーーーーーーー
5年前、妊婦向けの集団歯科検診を受け、「虫歯5本」と指摘された。
1か月後、実家近くの歯科を受診すると今度は「1本」と言われ、その治療だけで済ませた。先生によって虫歯の本数が違うのは、なぜですか。(埼玉県朝霞市 主婦 長坂亜希子さん 30)
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東京医科歯科大教授で歯科総合診療部長の俣木志朗さんは「初期虫歯は見た目では判別が難しく、虫歯の定義にもあいまいな点がある」と言う。
虫歯は、表面のエナメル質の軟化から始まる。白濁や茶、黒などの着色があっても、単に汚れの場合もある。唾液(だえき)や歯垢(しこう)があると見えにくく、奥歯の溝に沿って細く深く進んだ虫歯は見逃しやすい。学校検診など照明が不十分だと、なおさら診断の水準は下がる。
そこで、鋭利な探針(たんしん)を用いて歯の硬さを確かめる「触診」が行われる。しかし、感触からの判断は、歯科医の経験に左右されるため、個人差が出ると言われる。また、探針は強く押すと、歯を傷つける危険が指摘される。このため日本学校歯科医会は2003年から、学校検診では視診を主とするよう指導、一般に使われていない。
適切な歯磨きなどで経過を見る要観察歯(CO(シーオー))と、場合によっては治療が必要な初期虫歯(C1)の鑑別に「明確な線引きがない」(俣木さん)という問題もある。
こうした中で、「レーザー診断」を導入する歯科医もいる。健康な歯質と虫歯菌により軟化した歯質のレーザー光線への反応の違いを数値化し診断の参考にする機器だ。利用する愛知学院大教授の千田彰さんは「歯垢や着色などの諸条件に左右されるので、これで診断するのではなく、一つの目安」と説明する。
視診、触診、レーザー検査に加えて、エックス線写真も使われる虫歯診断。ほかにも重要な要素がある。虫歯菌や歯を修復してくれる唾液の性質や量、歯磨きや食事の習慣など、口内の状態には個人差が大きい。俣木さんは「総合的に危険度を見極めなければなりません」と語る。
質問の長坂さんの場合、集団検診では着色など虫歯の疑いのある5本が「虫歯」とされ、実家近くの歯科では、治療が必要な1本だけが指摘された可能性が高そうだ。東京医科歯科大教授で虫歯学が専門の田上順次さんは「集団検診は歯に注意を促すための参考です。診療所を受診する際は、削る必要があるのか、適切な予防管理で修復可能なのか、よく聞いてみて下さい」とアドバイスしている。
初期虫歯と再石灰化(さいせっかいか) 口内の細菌が、食べカスを取り入れて出す酸で、歯の表層が軟化し始める状態が虫歯の始まり。この段階なら、唾液の働きでカルシウムとリンが付着して歯を修復する「再石灰化」で、歯が元に戻る可能性がある。
(2006年1月24日 読売新聞)
ーー引用ここまでーーーーー
〜コメント〜
学校の歯科検診では,半日で200〜300名のお子さんのお口の中を拝見し,虫歯や歯肉円などのお口の中の異常を発見しなければなりません.
また,お口の中を拝見する環境もライトの明かりが充分でなかったりするため,奥歯の状態を完全に把握する事は困難です.
ですから,重度に進行した虫歯は,明らかに虫歯ですと報告することができます.一方で,虫歯と疑わしき着色などは,治療の必要な虫歯かどうか充分に確認出来ません.そこで,疑わしき歯も全て虫歯として報告し,歯科医院への受診を促します.
ですから,患者さんには検診で虫歯と言われたけれど,実際に歯医者さんで充分な検査を行なうと,むし歯治療の必要がないと判断される事もあるのです.
それでも,検診で虫歯と判断された場合は,少なくとも一度は歯科医院を受診し歯科医師や衛生士からのお話を聞く事をおすすめします.
posted by NandH at 15:10
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