埼玉新聞より引用
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歯科医の免許がないのに歯の治療をした疑いがあるとして、県警生活環境二課と浦和署は二十六日、歯科医師法違反(無許可医業)の容疑で、さいたま市南区鹿手袋四丁目、整体センターなどを運営する有限会社「エイ・ジェイ・エス」(AJS)や同社傘下の歯科医院など十数カ所を家宅捜索した。
調べによると、同社の代表取締役の男性(62)は、歯科技工士の資格しかないのに、二〇〇四年ごろ、患者数人の歯を削るなどの治療行為をした疑いがもたれている。
治療は大半が保険適用外で、患者は治療費として百〜二百万円を支払っていたという。
男性は歯のかみ合わせを矯正することで腰痛や肩こりなどを治す治療法を唱え、十冊近くの著書を出版。
同社は男性によって一九九一年に設立され、歯科医院へのかみ合わせ矯正治療の指導や研修を行っている。
県警は、治療法の一環で、診療行為をした疑いがあるとして男性から任意で事情を聴いている。
県警の捜査員は二十六日午前九時ごろ、歯科医師法違反容疑で、さいたま市南区の「エイ・ジェイ・エス」社の歯科医院兼整体センターに入った。
午前十一時五十分から午後二時五十五分にかけて、三回に分けて計約五十箱分の段ボール箱やパソコンなどをワゴン車に運び出した。段ボール箱には、カルテや歯の模型などが入っていたとみられる。
この日、歯科医院は休診日で患者が訪れることはなく、ひっそりとしていた。同社代表取締役の男性の妻は家宅捜索終了後、「今は何もお答えすることはできません」と話した。
エイ・ジェイ・エス社の治療をめぐっては、同社の歯科医院で治療を受けた男性患者(48)=さいたま市=が二〇〇五年一月、同社の代表取締役男性らを相手取り、約三百万円の損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に起こしているほか、この男性患者からの訴えを受けて、さいたま市保健所が〇四年九月、同社を立ち入り検査している。この際、代表取締役男性は「私は歯を削ってない」と否認したという。
民事訴訟の原告の男性によると、〇四年五月、男性はさいたま市南区の同社の歯科医院で計四回の治療を受けた。
この際、代表取締役男性から「かみ合わせが悪い。このままでは今後体に障害が出る」と言われ、治療済みの正常な歯を削られた。歯は大きな穴が空いた状態で治療が済んだとされ、男性は食べ物をそしゃくすることができなくなったという。
男性は「歯科医師ではないとはうすうす分かっていたが、『私の理論はノーベル賞に値する』という代表取締役男性の話を信じて治療を受けてしまった」と話している。
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【コメント】
この方の著作を調べてみると,「歯の噛み合せがすべての原因だった」などといった,噛み合せを治しただけでどんな病気も治るといった内容のものばかりです.この様に,ある治療法だけで何でも治ると謳う人に名医はいません(この人は医師でもありませんが・・・).何か1つの治療法で何でも治せるなどという考えは,傲り以外の何者でもありません.病気で不安が一杯の患者さんは,耳障りの良い言葉には引きつけられやすいと思いますが,耳障りの良い言葉には裏があります.医者選びも自己責任の時代です.気をつけましょう.
それはともかく,この技工士は歯科医院で歯を削っていたのです.歯を削らせる歯科医師の問題が大きい気がします.歯科医師は,患者さんの症状から治療法を判断し,技工士に治療に必要な義歯や補綴物を依頼する責任があります.経験を積んだ技工士と歯科医師が対等の立場になって,患者さんのために相談する事はすばらしい事ですが,治療を委託してはならないのです.この歯科医師は,治療の責任を放棄したという事になります.同じ歯科医師として嘆かわしい事です.